古の想い
古く昔から知っているような…
そんな錯覚に襲われていた。
それは、ヒノエが遠くに居るような、けれど、
温かいその心は何時も俺の傍にあるようで。
「どうしたんだ?将臣。」
「いや…平和だと…思ってな…。あの時戦っていた自分が見えないんだ。」
「戦は…終わったんだ。お前は平家の還内府じゃないんだ。…有川将臣なんだ。」
そういうと、俺の横に座り黙り込んだ。
俺は隣に居るその肩を抱いて、ヒノエの温かさを感じていた。
すると、黙っていたヒノエが、また口を開き俺に言った。
「時々…というのか、少し前か…不思議な感覚を覚えるんだ。
将臣を古くから知っていたような…何処と無く、懐かしいような…」
突然言われた言葉の中身が、自分が考えていたことと同じで
心を読み取られたのかと、少し驚いた。
だが、それは違っていて…ヒノエも自分と同じ気持ちなんだと
何処か嬉しくて、何処か温かくなるような。
急に黙り込んでしまった俺に、今度はヒノエが気にしたのか、
「今日の将臣おかしいぞ?大丈夫か?」
と、言いながら俺の顔を覗きこんできた。
胸が高鳴るのと同時に
驚いて吾に返った。
「俺も…同じことを思っていたんだ。ヒノエと同じことを。
何処かで出会ってる気がするんだ。
どうしても、ヒノエが愛おしくてたまらない。
ハハッ…少し歪んでるな。」
「確かに歪んでるな…だけど、俺も同じかも。
歪んでても、将臣が愛おしい。」
俺がヒノエを抱き寄せると、ヒノエは少し不満そうな顔をした。
「男に抱かれるのは好きじゃないんだけどね。」
「ハハッ。俺が抱いてやるんだ。ありがたく思え。」
同じ気持ちなんだ。どちらも気付いていなくて…けれど
心の何処かに、少しだけその可能性を持っていて…
ある日の昼下がり
縁側に重なった二つの影
回りの時間が過ぎていても
二人の時間は進まない
今までの時間を消費していくように。